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たまに出る、定額法と定率法ってなに?

FP

今回は、タックスプランニングの分野から、定額法(ていがくほう)と定率法(ていりつほう)についてちょっと詳しく説明します。

この定額法とか定率法というのは、減価償却の方法で、所得税の事業所得の計算(や法人税の計算)で出てくる内容です。

簿記の話なので、簿記を学習した人はなじみぶかいと思いますが、簿記を学習していない人にはよくわからない内容ですよね・・・。

簿記を学習していて、定額法と定率法の内容を知っている人は、読み飛ばして、だけどFP2級を受験する人は、最後の「はい、ここからみなさん、戻ってきてください」から下だけちょっと見ておいてくださいね。

さて…
そもそも事業所得は、「総収入金額-必要経費」で計算するのですが、この必要経費の例として「減価償却費」があります。

<減価償却とは>
減価償却とは、固定資産の取得原価(しゅとくげんか)を耐用年数(たいようねんすう)にわたって費用化する手続きをいいます。

固定資産というのは、建物や備品など、長期間にわたって使用する資産のこと。

また、耐用年数とは、使用期間のことで、会計的には会社が「この年数使用する」と決めたら、その期間でいいのですが、税法的には「この資産は耐用年数〇年として計算すること」など資産の種類によって耐用年数が決められています。

なんで会計と税法で違うかというと、目的が違うから。

会計は、会社の状況を適切にあらわすことを目的としているので、「この資産はこの期間使用する」と決めたら、その期間で計算するのが目的にあっています。

一方、税法は、課税の公平性を目的としていて、同じ資産を使うならば、どの会社も費用計上額は同じように計算しないと公平じゃないよね?…という考えがあります。ですから、同じ資産であれば(金額は異なっても)費用化できる期間は同じで計算してくださいね、ということなんです。

少し話がそれました。減価償却に話を戻しましょう。

たとえば、60万円の備品を買ったとしましょう。そして、この備品の耐用年数は5年とします。

この場合、備品を買った年度に60万円全額を費用とすることはできず、この60万円を5年間の費用として計上しなければなりません。これが減価償却です。

そして、1年分の費用額…これを減価償却費といいます…を計算するときに、いくつかの計算方法があります。

主な減価償却方法には、定額法(ていがくほう)と定率法(ていりつほう)があります。

定額法はFP3級でもたまに出てくる内容で、定率法は2級で用語程度は出てくるかな、というものです。

<定額法>
定額法というのは、取得原価…資産を購入したときにかかった金額です…を、耐用年数にわたって均等に費用化する方法です。

取得原価60万円の備品を耐用年数5年で償却するなら、1年分の減価償却費は12万円(60万円÷5年)ですね。単純に割るだけです。

ここでちょっと注意してほしいのは、もし、今年度の途中で資産を買ったという場合には、1年分を計上するのではなく、使った期間分だけ月割りで減価償却費を計上するということです。

たとえば、今年度(会計的には「当期」といいます)が2021年4月1日から2022年3月31日までで、当期の7月1日に備品を買って、その日から備品を使い始めている、という場合には2021年7月1日から2022年3月31日までの9カ月分だけを減価償却費とします。

1年分の減価償却費が12万円(60万円÷5年)ならば、1カ月分の減価償却費は1万円、そうすると、当期9カ月分の減価償却費は9万円(1万円×9カ月)ですね。

この月割計算は、3級でもたまに出てきますのでご注意ください。

<定率法>
つづいて、定率法です。
定率法は、減価償却費の金額が当初は多く計上され、年々少なく計上される方法です。

ちょっと簿記的な話になりますが、定率法は

減価償却費=(取得原価-減価償却累計額)×償却率

で計算します。

減価償却累計額とは、これまで計上した減価償却費の合計、償却率(しょうきゃくりつ)は耐用年数に応じた率で、0.2とか0.4とか決まっています。

取得原価が60万円で、耐用年数が5年、償却率が0.4の場合、定率法によると減価償却費は

1年目:60万円×0.4=24万円

2年目:(60万円-24万円)×0.4=14.4万円
ちなみにこの時点の減価償却累計額は38.4万円(24万円+14.4万円)

3年目:(60万円-38.4万円)×0.4=8.64万円


となります。

年々、減価償却費が減っているでしょ?
これが定率法の計算です。

定率法の詳しい計算式は覚える必要はありませんが、イメージだけおさえておいてください。

はい、ここからみなさん、戻ってきてください

FPの試験では、3級、2級ともに定額法による減価償却費の計算(月割り計算を含む)は出題されることがありますが、定率法の計算はさほど気にしなくていいと思います。

それよりも、、、。

①建物や構築物は定額法で計算する
②建物等以外は定額法でも定率法でも選定できる
③事前に選定していない場合、決められた方法(法定償却方法)で計算しなければならない
④法定償却方法は、所得税と法人税では異なっており、所得税の法定償却方法は定額法、法人税の法定償却方法は定率法である

というところをおさえておいてください。

試験では、そんなによく出る内容ではないのですが、④について、2級の受験者から、年に2、3回、「教科書と問題集で内容がちがいます!」というご指摘を受けます。確認してみると、税法がちがうよね…ということなのですが、ちょっと間違えやすいですよね。